乗り物が苦手だった私はほとんど家から出ませんでした。旅行にもいかないし、何かを体験しに行くこともないし、瞑想の合宿すらZOOM参加でした。
よって、「体験」という言葉にはコンプレックスがあり、「自分は何も体験していない」「体験でないと学べない感情の部分は欠けている」と、思っていました。
しかし、最近、小さな日常生活に関してでも、ちょっとのことで体験をしているのだと思うようになりました。
例えば、神戸の三ノ宮に有名な文房具屋さんがあるのですが、そこの「Kobe INK物語」は、今数えただけでも120種類位いあり、途中で数えるのを止めました。
このインクは2007年から発売を開始しています。今思えば新聞で見たりTVで紹介されたりしていました。
私は万年筆を使わないので、ニュースは知っていましたがそれで終わっていました。
しかし、それがいまだに続いて新しい色を出し続けているとは驚きです。
そもそもは、阪神・淡路大震災の復興を願って始まりました。それまでのインクというのは黒・青・赤が主流でしたが、被害を受けた神戸の街が、支援を受けて明るい色を取戻した様子をインクで表現したいという想いから誕生しました。よって、六甲山の深い森の緑、メリケン波止沖の海の青、旧居留地の落ち着いたセピア色など、神戸の多様な色彩をインクに込めており、その色数は日本一と言われています。そしてその色だけでなく、その色と物語性で全国の万年筆を愛する人を魅了しています。
色の開発にあたっても、私の遠い記憶ですがインクを買いに来た若い人とお店の方が話をしているうちに、その人にはその人の物語があり、そこから色を思い付いたというのを、これも新聞で読んだ記憶があります。色々な色を混ぜ合わせ、本来の常識を覆すインクになりました。よって全国的に人気のあるインクになりました。
昨年7月の「高麗青磁」色の新商品のボトルは、予約受付が1か月前の6月となっていました。
よって、予約受付をするくらい人気があり、今でも続いているようです。
普段、文房具屋さんでボトルインクを買う時は黒・青・赤の3種類の中から必要な色を選んで買っていくだけです。
しかし、このお店で買う時は、ボトルインクのラベルを見てそのインクの色物語を知り、書いてみて紙に映し出される色を確認し、あれこれの色を試してから自分の色を選んでいく。用途によって色は違うし、相手によってもその人に合った色を選んでいく。
お店に入ってから選んで会計をするまでには、心がワクワクする楽しい時間を体験すると思います。
これは通販やAIでは出来ない体験だと思います。
そして今、気が付いたのです。
旅行やあちこちに行って体験していないというコンプレックスが、ボトルインクの色と物語を創造して想いを馳せ、楽しんで感じる事も1つの体験ではないのだろうか。こういう体験もあったのかと思いました。
じゃ、また明日!