昔から「仏作って魂入れず」と言うのを耳にしていました。
AI概要によると、「仏作って魂入れず」は、物事のほとんどが完成しているにもかかわらず、最も重要な部分に(が?)欠け落ちていることを意味する慣用句です。
ものを創っている職人さんはこの言葉はよくわかると思います。それが作品と言うものになれば成るほど、形だけなのか、その作品に作者の魂が宿っているのかによって、見た人の心にどれだけ届くのかにも違いが出ます。
これは何にでも共通していると思いますが、それを極めれば極めるほど、作品の方から教えてくれます。
私は木彫りのキーホルダーを持っているのですが、そこに彫られているノミの跡でその時の作家さんの魂の込め方が伝わってきます。何個か買ったのですが、一作ごとにノミの線から強さが出てきています。ノミの勢いがあり、動きを感じられたりします。
私も能面を打っていた時は、ある程度の所までは木を彫っていたのですが、顔の形が出て来てからは、木の方からノミを導いてくれます。ここをもう少し彫って欲しいな、とか、こっち側をもっと彫って欲しいな、とか。そのノミの導くままに手を動かすと、いつの間にか四角い木が能面となって魂が宿るのです。
お料理にしても、例えば、大豆やピーナッツを炒っていると、混ぜているお箸の感覚が違ってきます。重たかったのが軽くなり、そろそろ出来上がりがわかるのです。これは何回もやり続けることによって、何も考えなくてもお箸の先を通じて教えてくれるのです。
何事も最高の瞬間は、器と中身が一致した時です。仏と魂が一致した時です。
これが企業だとすれば、仏は会社そのものであり人事制度です。魂は企業理念やビジョンです。仏像に魂を入れることを「開眼」と言うそうですが、企業も建物を作っても企業理念やビジョンが伴わなければ、ただの施設になってしまいます。そこに企業理念があり、ビジョンが明確にされていると、そこの施設は100%活かされることになると思います。
つい最近目に入ったのですが、商店街で改装中のお店、市場の中にある老舗の創業100年を超えた「蒲鉾屋」さん。
市場が高齢化でどんどんお店が閉店していく中、数件で頑張っておられたのですが、この度、その商店街に面して
「練り物を楽しめる大型居酒屋」をオープンさせるようです。お店の作りが歴史ある歌舞伎風の建物で、非常に楽しみです。
3代目になろうかと思うのですが、商店街の活性化を狙ってのオープンのようで、まさしく店主の理念がお店のつくりに反映しているようで、今から楽しみです。まだ改装中ですがこのお店は「仏作って魂を入れて」います。
反対に魂があるから、人を惹きつける歌舞伎座そのものの店構えになるのだと思います。
どんどん閉店していく中、商店街を盛り上げようと、頑張っておられるのが伝わってきます。今までも遠くから買いに来られていたようですが、この居酒屋さんも人を惹きつけると思います。
人を動かすのは「仕組み」だと聞いたことがありますし、仕組み作りに力を入れている企業さんもあります。
しかし、社員やお客様を動かすのは、この家族総出でやっている蒲鉾屋さんの社長のように、商店街を愛する想い、高齢化でもすたれさせない想いが、人々に「共感」や「信頼」を与えるのだと思います。
家族総出で「仏作って魂をいれている」のを見た気がしました。
じゃ、また明日!