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新聞の「くらしの法律相談」で母親からの相談がありました。
小学校5年生男児が汚れた服を洗っており、体にあざがあった。
息子を守るために何が出来るでしょうか。というものでした。
いじめ防止対策推進法に則って、弁護士会・総合法律センターの回答を要約すると、
①相談者は息子さんが通う小学校へ通報する義務があります。
②小学校は男子児童や加害児童へのヒアリングなどの調査を行い、教育委員会に報告せねばならない。
(相談者は調査結果の提供を受けられることがあります)
③小学校は男子児童や相談者の支援、加害児童に対する指導を行うこととされる。
④小学校は男子児童が安心して学習できる環境を整えなければならない。
(加害児童に別室で授業を受けさせるなど)
⑤相談者は調査結果を踏まえ、加害児童などへの民事損害賠償請求をすることが出来る。
⑥相談者は小学校に対する監督代行者責任も追及できる可能性がある。
⑦仮に、教職員の対応が不十分で、いじめが解消されなかったとすれば、
小学校を設置する自治体に対し、安全配慮義務違反を問うこともできる。
⑧相談者は警察へ被害届を提出すれば、加害児童の調査が進められ、
時に児童相談所へ送致されることがある。
と言ったようなことでした。
これがこのまま実現されれば、いじめ問題はもっと解決されるであろうし、
自殺まではいかないと思います。
現実は①から②の段階で「いじめはなかった」という事で③以降に進めないのです。
この通りにスムーズに進めることが出来るのであれば、小学生や中学生の自殺者数は
もっともっと減っているはずです。
よって、文部科学省が出している「いじめ防止対策推進法」(平成25年法律第71号)を
読んでみました。
(基本理念)では「しなければならない」と謳っています。
また、国・地方公共団体・学校設置者・学校及び教職員・保護者の各責務についても
「○○とする」と書いてあります。
しかし、第三章の(基本的施策)以降、施策=実行すべき計画 であるはずなのに、
「するものとする」という言い方になっています。
法律用語の解説によると、
「するものとする」の言い回しは危険。
とありました。
なぜなら、
「するものとする」は「・・・とする」とよく似ていますが、法令上は独特のニュアンスを持つ
用語として使われます。
第二に、一定の行為を義務づける場合に使われます。この場合「しなければならない」ほど
拘束力は強くなく、取り扱いの原則や方針を宣言するというニュアンスで使われています。
場合によっては、合理的な理由があればこれに従わない事も許されることもあり得ます。
以上からすると、施策=実行すべき計画 は合理的な理由があれば、これに従わない事も
許される場合もあり得る、という事で、合理的な理由と判断するのは誰なのか。
そもそもこの法案が出来上ったのは、2011年の大津市の中学生の自殺を機に翌々年に、
「いじめ防止対策推進法」が成立しています。
その時は自殺者を出さないようにという事で、この法案が成立したと思うのですが、
その時から「するものとする」という言葉を使っているという事は、文部科学省が
どれほど真剣に本気で子どもの自殺をなくそうと考えていたのか。
その取り組み姿勢が今現在のいじめ問題に繋がっていると思います。
これだけ立派な「いじめ防止対策推進法」が本当に機能して実行されれば、
各地で現在も起こっている、いじめ問題や自殺者は減るのにと思います。
じゃ、また明日!